第四話 女子水泳部員のゴーストが現れる女子更衣室片隅で愛を叫ぶ男子(11)【美少女遊戯】

美少女遊戯 -ちこさんの秘密-

「な… んだと」

「真相を知りながら放置したままにはできません」

 生徒会というのは生徒たちが自主的に物事を決ている自治的な組織だ。だが学校側からすれば生徒会長を後ろから操作しているという認識なのだろう。一般的には生徒会に自治はない。だが唯々野さんは違う。自らの意思で地に足をつけ毅然としていた。学校側とは一線を引いた存在なのだ。

「け、警察はそんなもの取り合わんさ。ま、まぁ… 好きにするといい…。だが水泳部の部室に入ったことは認めてやらんでもない」

「それは自白と受け取っても?」

「いやぼかぁ女子水泳部の鍵なんて持っていない。友人と会うために男子水泳部の部室に入ったのだ。それ以上でもそれ以下でもないさ」

「2階へは一切上がっていませんか?」

「無論だ。昼寝をしていたと言っただろう。友人が部活中だったものでね。少し待たせてもらったのだ」

「え、でも待ってくださいですわ」僕は圓頓寺の侵入を見ている。「ワタシ、先輩の後を追ったのですが、男子の部室には先輩はいませんでしたよ?」

「ほお? つまり君は女子の身でありながら、男子の部室に侵入したのかい?」

「それは… ちょ、調査のために仕方なくです」

「フンッ ぼかぁ君の姿には気づかなかったな。昼寝していたしな。君が見落としていただけなんじゃないかね?」

「そんな…。部室に隠れるところなんて…」

 狭い部屋だ。見落とすわけがない。圓頓寺は明らかに人目を避け、裏から侵入した。そして2階の女子の部室へと行ったのだ。

「その話は平行線だろう」唯々野さんは目で僕らを制する。「でも圓頓寺さん、こちらには貴方が男子の部室に侵入したところの映像も抑えてある。そして内側から解錠され、鍵は開けっ放し。そして女子の部室からは貴方と女生徒の声。証言と状況証拠は揃っています」

「……。ふむ。まあ好きにしてくれ。だがぼくが女子の部室に侵入したとして、その女生徒の声は証明できない。しかもぼかぁ実際に女子の部室にいなかった」

 悔しいが確かに圓頓寺は消えていたのだ。

「ゴーストが関係しているとしたら立証は難しいでしょう。ただコレは警察に突き出します」

 唯々野さんが掲げる精子。僕らにとってはそれが唯一の拠り所だろう。

「ゴーストの存在証明や消失のトリックを解く必要なんてないのですよ。事件解決の道筋は『精子を射精(だ)した者は誰か』の一点だけです」

「……」

 圓頓寺に反論はない。

「遊花さん。お使いに行ってもらえます?」

「うえぇ。ばっちいけどあいあいさー」

 唯々野さんは遊花に証拠品を手渡した。男性嫌いの遊花にそれを持たせるのは酷だが、この場に留まらせるのも酷だ。お使いに行ったほうが気楽に違いない。

 目標を与えられたら突き進むのが歩兵の役目とばかりに遊花は生徒会室を飛び出そうとする。

「待ち給え!」圓頓寺は意を決したように叫んだ。「仕方なくだが… 認めてやろう」

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