「その亡くなった女生徒とぼかぁ何か関係があるのかね!」
圓頓寺は素知らぬ顔をしている。知っていそうな反応だったのだが…。
「水泳部に伝わる記録では一言主さんは県大会に名を連ねるほどのエースでした。それがあることをきっかけに成績を落とし、ついには命を絶ったという話でした」
唯々野さんは突然、自害をした一言主伊千寿(ひとことぬし いちず)という女生徒の話を始める。
僕らが圓頓寺を探している間に会長は事件の全貌を掌握してしまったらしい。
「だからぼかぁ何も関係ないだろ? 何をいきなり言い出すんだ」
「本当にそうでしょうか?」
圓頓寺はあくまでしらばっくれる。唯々野さんは机から下りて圓頓寺の前に仁王立ちになる。
「一言主さんは自害後も度々部室に現れるそうです」
「!? そ、それって……」
「怖っっ」
僕と遊花は仰け反って身を引いた。
「ゴーストか何かだというのかい?」
圓頓寺は動じない。
「さあ? 部員の方たちの証言では浮かばれない地縛霊だということになりますね」唯々野さんも淡々と続けている。「圓頓寺さんは幽霊や超常現象の存在は信じているのですか?」
「……フッ 現代の科学でわからないことはわからないとしか言いようがない」
「とてもまともな回答ですね」
「そのわからないゴーストが何だって言うんだ?」
「一言主さんは何人かの男子生徒に乱暴されたということです。恐らくそれが自害の直接的な原因となったのだろうと推測されますが」
「……」
亀甲縛りのせいでもないのだろうが圓頓寺の顔色は悪かった。やはり何か知っているのか?
「圓頓寺さん。水泳部の部室に入り込んで一言主さんのゴーストと何をしていたのですか?」
「…フッ ゴーストと言われてもね。だからぼかぁ女子水泳部の部室なんて入ってな…」
「いや… あのっ」
僕はカバンからゴソゴソと例のものを取り出した。
「ボ、ワタシは圓頓寺先輩の後を付けていったんです。先輩が男子の部室に入っていくところを見ました。その後に2階の女子の部室に行ったのですわよね? 部屋の中で採取したんです、コレ」
圓頓寺の白い体液。
「フッ まったく説得力にかけるよ。君が見たのは男子の部室に侵入したところまでだろ? それに現行犯で取り押さえられたならともかく、どこの誰とも知れないそんなものを見せられたからって…。DNA検査でもしてみるかい?」
やはり認めはしないか…。一介のJKたちにそんな検査はできないだろうと見越されている。僕はもうこれ以上の材料を持っていない…。
「学校側の意思としては警察沙汰は避けたいところでしょう。しかしながら…」唯々野さんはまだ圓頓寺を追い詰めようとしている。「生徒会としては警察にこの精液を提出することは吝かではありません」
きっぱりと言い切った。圓頓寺は目を見開いている。
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