「幽霊の正体見たり枯れた男性のシンボルって言うでしょう? 見落としているものがあると思います」
「そうですね、いや… 前半のは違うんですけど」
「水泳部はまだ私たちの知らない情報を隠し持っているかも知れません。追加で事情聴取したほうがいいと思います」
「わかりました。さ、探ってみます」
戸締まりを厳重にしていた部室内に精液が突如として出現した。練習終わりで帰ってきた水泳部の女子たちはそれを発見した。鍵はしっかり施錠されていた。
水泳部の証言で解っている主な情報はそれくらいだ。そう言えば密室トリックの謎は解けたと、ノン眼鏡スタイルの唯々野さんは言っていたな…。眼鏡を外したときにでも詳細を聞いてみよう。
「まずは圓頓寺さんの安否確認ですね。それから事件当時の行動(アリバイ)を確認しないとでいけません。本人と接触できたならそれとなく聞き出してください。難しければ私が対応します」
もし本当に消えたのなら対処のしようがないが、超常現象を疑うよりもまずは本人がちゃんと家に帰宅しているかどうかを確認するべきだ。そして立ち寄りそうなところも確認しておかないといけない。
*
僕と遊花は圓頓寺の自宅へ向かうことにした。
地図アプリを頼りに都心のタワーマンションへと向かった。
「目立つとこに住んでるんだね。いけ好かないやつ。ここエロ社長かエセ占い師しか居ないんでしょ?」
「タワマンに住んでるだけで、そんなに言われなきゃいけないですの?」
男性嫌いの遊花を連れてきて良かったのだろうか…?
僕は部屋番号を押して圓頓寺を呼び出した。程なくして親御さんと思われる人が対応してくれたが圓頓寺はまだ帰宅していないようだ。礼を言ってタワーマンションを出る。
「部室から消失して約1時間半くらいか。家に帰ってないとなると… どこに消えたんでしょう?」
「もうお手上げじゃん?」
「諦め早いな…」
「他に立ち寄りそうなところってどこ?」
「高校生の定番はファミレスかカラオケ屋さんですかね。通学路を辿って沿線のお店を覗いてみますか」
僕と遊花は不毛とも思える調査を再開する。
*
「ねえ、もうだいたい見たし、ここで休憩していかない?」
「あの… ボ…、ワタシお金持っていませんので」
繁華街を少し離れたところに古めかしい屋敷が聳え立っているのが見えた。大人が宿泊したり休憩したりするホテルだ。
「心配しなくていいんだよ。あたしも持ってないしー。女の子二人ならサービスしてくれるって」
「未成年にそんなサービスしないと思いますけど…? いや知らないですけど」
「組んず解れつ抱き合ったらほとんどの問題は解決すると思うの。へへへへっ」
「それ現実逃避って言うんですよ、遊花さん」
沿線のお店には圓頓寺の姿はなかった。もちろん全部を見回ったわけじゃないけど簡単に見つからない気はしていた。
コメント