復讐の為に鐘は鳴る – 【 閑話:洗濯娘の火遊び 】

復讐の為に鐘は鳴る

復讐の為に鐘は鳴る

【 閑話:洗濯娘の火遊び 】

 宿屋の娘は洗濯娘。夕暮れにお客さんの服を預かり、木盥の水に浸して踏み洗い。お代金は小銅貨一枚になります。

 洗った服を干すのはお客さんのお部屋。暖炉の薪はお客さん持ちですから。物盗りに盗まれる心配もありません。服は明日の昼頃には乾くことでしょう。

「お嬢さん。一緒にどうだい?」

 テーブルに並んでいるのは雑穀パンに豚の腸詰め。屑豆のスープに蒸かし芋。そして木杯に入った麦酒です。中級宿屋のお客さんとしては上等と言える食事でしょう。

 そんな上等なお客さんは全裸で椅子に座っています。一張羅の服は暖炉の上に吊してありますからね。

 お酒を片手に裸で同席を誘われていることの意味くらいわかっています。わたしももう十四のお年頃ですから。

 目聡く、あざとく、愛らしく。銅貨の鈍い輝きよりも、わたしの眼は光るのです。このお客さんは一夜限りの主人に相応しいのかどうか。

 街商人である宿屋の娘に色恋沙汰の噂は許されません。求婚の花束の数を減らすわけにはいかないので。火遊びは慎重に、ということです。

 幸い、こちらのお客さんは旅から旅へのご様子。噂の心配はないと思われますし、お客さんにとっても後引く噂は重荷となるでしょう。

 だからこそ、わたしへのお誘い。独り寝の寂しさだけなら娼館で埋められますけど、そこまで足を運ぶのも煩(わずら)わしいものです。人目を避けるのはどうにも気乗りしないものですから。

 火遊びに大切なのは後始末。燻(くすぶ)る煙は噂と一緒。纏めて水に流したいのなら、裸でつき合える宿屋の洗濯娘と。

 それは賢い選択かと思われます。

「身体をお拭きしましょうか?」

「ああ、頼むよ」

 椅子を正面に向けるお客さんの股間は、もう期待に膨れ上がっています。

 あんな大きな逸物(もの)を、わたしのような小娘の膣内(なか)に挿れようとしているとは。それとも、大きくしてしまったのはわたしなのでしょうか?

 堪え切れない微笑みを隠しつつ、手拭いと手桶を準備します。

 手桶の水には暖炉の湯を足して人肌に。しかし、本当の人肌に勝る温度はありません。それを温もりと呼ぶようになったのは、火遊びを覚えた十二の頃でした。

「ご立派です」

 拭き拭きもそこそこにわたしは肉棒を両手にします。充血を終えた逸物(もの)の熱さと硬さにわたしは虜。豚の腸詰めを食べているお客さんのように、血の滴るような肉汁を早く味わいたいと、唾液を口に溜めてしまいます。

 でも、まだ我慢です。

 欲しがりは焦らされてしまうものですから。

 こっそり唇を舐めて、今は肉棒の手触りと匂いを愉しみましょう。

「立派なものを扱うのに慣れてる様子だが?」

「慣れていないと火傷してしまいますからね」

 椅子に座る大股開きのお客さん。その間に膝を突き、手に余る大きな肉棒を擦る上げるわたし。これは火遊び仲間にも自慢できそうです。擦れば擦るほど先端から溢れ出る肉汁は、もうわたしの指にまで垂れ落ちて、てらてら光っています。

 芳(こうば)しい匂いに頭はくらくら。思わず舌を伸ばしてしまいそう……。

「こんなに逞しい逸物(もの)なのに、泣き虫さんですね」

「逆だよ、こいつは女泣かせだ。何十人もの女を泣かせてきた」

「それはきっと嬉し泣きです。女は本当に哀しいときはここぞとばかりに泣き、嬉しいときはこっそり泣くものですから」

「お嬢さんもこっそり泣くのかい?」

「宿屋で泣き声は上げられませんからね」

「はは、そりゃそうだ」

 そんな睦言を交わしながらもお客さんの逸物(もの)は硬さを増しています。まるで、自分の手首でも握っているかのよう。溢れる肉汁はヌルヌルとわたしの手を滑らせて、擦り上げるたびに卑猥な水音を立てます。

 暖炉の火と蝋燭だけの薄暗がりの中、名前も知らないお客さんの股座で、そそり立った逸物(もの)を握り締めている自分。今にも亀頭を舐めてしまいそうな自分。床に落ちる肉汁の染みのように下着を濡らしている自分。

 火遊びはお酒のようなもの。どちらも身体を火照らせ、理性の留め金を一つ一つ外してしまうのです。

「……な、舐めてもいいですか?」

「今お嬢さんの舌で舐められたら、出ちまうよ」

「出して下さい。わたしもお腹ぺこぺこです」

 この膨れ上がった亀頭は、果たしてわたしの口に入るのでしょうか?

 まずは、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と滑(ぬめ)った亀頭に口吻を三回。唇に着いた肉汁を舐め取って、唾液と一緒に飲み込み、そのまま舌を伸ばします。れろ、れろ、れろ、と。舌先に感じる逸物(もの)の塩気と肉汁の苦味。舌触りは例えようもありません。

 半分だけ口に入る亀頭を咥えて、もっと肉汁を絞り出すように逸物(もの)を擦りながら、これまで堪(こら)えた分だけ濃厚に舐め回します。

 テーブルの下の食事作法は下品であってもいいのです。くちゅくちゅ音を立てても、貪りついても、大口をあけても。

「ん、んちゅ、はぁ……美味しい……お客さんの肉棒ぉ……♡ んちゅ、今まで食べた……ンちゅ、誰よりも、美味しいぃ……ンちゅう♡」

「……う、上手いな。今まで何人の男の逸物(もの)を咥えてきたんだ?」

「あ、ンちゅ……三十人くらい……ですか。ンちゅ♡」

 口いっぱいに唾液を溜めて、れろれろと舌先を鈴口に這わせます。唾液と混ざる肉汁を飲み込んで。唾液と混ざる肉汁を飲み込んで。繰り返していると肉汁の味はどんどん濃いものに。

 逸物(もの)を握っている手からも伝わります。これは射精手前の膨張。こんなに逞しい逸物(もの)です、どんな量の精子が飛び出るのか、飛び出た精子はどんなに濃いものなのか、わたしの胸も期待に膨らみます。

 わたしの頭を両手に持って、「うっ」と悩ましい声を上げるお客さんは──。

「──で、出る!」

 もう肉汁どころではありません。こてこてとした精子の塊は、無遠慮にわたしの咽喉に流し込まれます。

 どくどく脈打つ逸物(もの)と一緒にわたしも咽喉を鳴らして、小娘の小さな口を犯しているのだと、お客さんに主張します。男性は好みますからね、こういうの。

 椅子から腰を浮かして、射精の余韻に浸る姿の可愛いこと、可愛いこと。

 玉袋を揉み上げて、逸物(もの)の途中に残った精子を絞り出し、もう一飲み。少し逸物(もの)に零れた精子もきれいに舐め舐めして、鞣(なめ)したばかりの鹿革みたいにぴかぴかにします。

「ふぅ……」

「お客さんの精子すごいです。卵十個分の白身でしたよ」

「そいつを飲み干しちまうお前さんに乾杯だ」

 手渡された木杯の麦酒で口を洗うと、お客さんの唇はわたしの唇と重なります。床にお尻を着けて座るわたしに、椅子に座る全裸のお客さん。見上げるわたしの唇に、視線を落とすお客さんの唇。重なった唇はその隙間を割って、舌の絡み合いに変わります。

 伸ばされたのは舌だけではありません。お客さんの手は、襟元から入ってわたしの乳房に。つままれた乳首に「あっ」と声を漏らしても、重なっている唇と唇は、それを暖炉の薪の弾ける音より高いものにはしません。

 それよりも唾液。

 上からわたしの口の中にとろとろ流れ込む唾液に困惑します。乳首をつままれながら、舌を絡ませ合いながら、こんなにも唾液を飲まされるのは初めて。

 蕩ける眼に映る唾液の糸。それはなんとも背徳的な光景で、わたしの下腹部はしくしく疼いていきます。

「あ、あふぅ……ン。も、もう、挿れたいです。お客さんの大きいの。わたしのあそこは寂しいと泣いています」

「服は脱がないのか?」

「呼ばれたとき困りますから、このままで」

「胸と股は見せてもらいたいな」

「月明かりのない新月の晩ですよ?」

「覗き込むだけなら、蝋燭で足りるよ」

 服を脱がないとは言っても、出し惜しむつもりはありません。ただの思わせ振りです。それはお客さんもわかっていますから、強いる真似もしないのです。

 テーブルの蝋燭を寄せるお客さん。

 わたしは立ち上がり、襟元の革紐を解いて、慎ましい乳房を晒します。それから、スカートの中に手を入れて、足元まで下着を下ろします。革靴で汚してしまわないように下着を脱いで、腰帯の中へ

 その一挙一動に眼を凝らすお客さんは、わたしの目の前。手を伸ばせば触れられる距離。だけど見詰めているだけ。言葉もないままに。

 高鳴る鼓動は知っているのです。言葉はスカートを持ち上げてから。花開いているわたしの濡れたあそこを見てもらってから。 

 勃起している乳首も、咲き乱れている花びらも、早くお客さんの大きな逸物(もの)を欲しがっています。それを伝える為に、わたしはスカートを持ち上げて、ゆらゆら揺れる蝋燭の灯火にあそこを照らし出すのです。

「……可愛い割れ目だな。俺の……挿れられるか?」

 意地悪にも、くちゅくちゅ音を鳴らしながらわたしの花びらを愛撫し、花蜜に濡れた指先で勃起している乳首を転がすお客さんはそう尋ねるのです。

 挿れられるか、挿れられないか。そんな二択に意味はないのだと、自分から腰を動かしているわたしの痴態を見ればわかること。

 なのにお客さんはまた尋ねるのです。今度は両手で二つの乳首を刺激しながら「挿れられるか?」と。

 花蜜は太ももに垂れています。弄られているのは乳首だけなのですから。満開に花開いた花びらを目の前に見せつけているのに。

 もう挿れたい。もう挿れたい。一歩よりも近い距離に、お客さんの逞しい逸物(もの)はそそり立っているのです。

「あぁ、ンあ……ん♡ い、挿れられ、ます……♡」

 腰を突き出してそそり立つ逸物にわたしの花びらを擦り合わせます。ねちねちと音を立てるのは、香袋よりも香る花蜜の粘りのせい……。

「ふはぁ……ンあっ♡ い、挿れて……火遊び仲間に、自慢します♡ わたしの手首ほどの逸物(もの)をぉ……あっ、味わったって。きっと、みんなにぃ……ふあ、う、羨ましがられ、ます♡」

「じゃあ、たっぷり味わってもらおう。俺もお嬢さんの可愛い割れ目を味わうから」

「いつか娶る奥さんに自慢して下さい、ね」

「ああ、そうするよ」

 向かい合ったまま、お客さんの座る椅子に片足を上げます。このまま跨がってしまおうというわけです。

 祖父の時代からある年代物の古椅子は、わたしたち二人分の体重に堪えられるでしょうか? そんなことを考えさせてしまうほど椅子はギシリと軋みを立てます。

 お客さんの首に手を回すわたし。

 気分は幼子。抱っこされているみたいですから。でも、わたしを抱き締めているのは父ではありません。三十四人目か三十五人目かの、行きずりの、名前も知らないお客さんなのです。

 お客さんの両手はわたしのお尻に。持ち上げられたお尻の肉に食い込む指は、わたしの花びらを広げます。広がった花びらに触れる逸物(もの)の先端は、零れ落ちる花蜜でとろとろです。

 挿入るでしょうか? わたしの幼裂にこんな大きな逸物が挿入るのでしょうか? 挿れられるというこの瞬間が、一番興奮する──。

  ◇◇◇

「それから? それから?」

「もう無理やり挿れちゃったよ。だって我慢できないもん。挿れてる途中でイきそうになって声出しちゃいそうだったけど、ちゅーって舌を吸われて声も吸われちゃった」

「そんなに大きいの全部挿入ったの? アウーラ、奥深いわけじゃないでしょ?」

「全部は挿入らなかったかな? 一番奥まで届いたときにはもうイっちゃってて、そこからしてる最中はあんまり憶えてないんだけどね、三回はイかされたと思うな。相手は五回くらいイってたよ。わたしの膣内(なか)から木器一杯分も精子出てきたから」

「いいなー。もう街にはいないかな」

「宿から出たなら街にはいないでしょ。正午の乗合馬車も出発してるよ?」

「あの人、あそこの大きさだけじゃないよ、相当女慣れしてる感じ。読み書きの学士らしいんだけど、教え子に教えてるのは絶対に文字だけじゃないよ。おっぱいの触り方とか乳首の舐め方とか、どうすれば気持ちいいのかわかってたし。当分あの人以上の男は現れないかな」

「下手なら下手で面白いけどね」

「そうだね」

 製靴屋のラーナと仕立屋のクラルは火遊び仲間。火遊びの楽しみは快楽だけではないのです。こうして話に花を咲かせることも楽しみの一つ。一人で火を灯す火遊びなんて、一人遊びと変わりません。そんな寂しい街娘には求婚の花束も少ないことでしょう。

 余暇を持て余しても、若い身体を持て余しても、美しい女にはなれないのです。上等な花束を受け取るには、花束よりもきれいな花にならないと。相手よりも見劣りする花束を持って求婚する男もいませんし。

 ですが、火遊びは秘密の夜遊び。女の秘所は時至るまで隠されていてこそ。見境なく散った花は、舞い落ちる秋の木の葉のように踏み潰されてしまいます。

 いつか現れるだろう誰よりも高価な花束を持った人には、こうするのです。

 割れた花瓶の破片を使い、初夜の三日前に膣の奥を切っておくのです。逸物を挿れられたら傷口が開くように。滴る血は純血の証。滴る涙は純心の証。そこから先は、わたしも貞淑な女であることを誓いましょう。何年後かの話ですけどね。

「今度は三人で愉しもうよ」

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