復讐の為に鐘は鳴る-【 閑話:さよならティファニー(後編) 】

復讐の為に鐘は鳴る

復讐の為に鐘は鳴る

【 閑話:さよならティファニー(後編) 】

 朝陽の到来を告げる雄鶏も、時折早とちりします。夜明け前の阿呆鳥とは「そそっかしい」「慌て者」「おっちょこちょい」という意味にもなります。

 それでも「もうすぐ朝だよ」という合図は、時計塔のない街には欠かせない“そそっかしさ”なのです。

 もう朝陽の昇る手前でした。

 一晩中していても疲労はありません。大麻を吸引し、麦酒と葡萄酒を飲み、お腹に溜まらない程度に食べ物を口にする。そんな休息を挟みながらも、三人一緒の情事は続いていました。

 ベッドの端に座る調教師さん。調教師さんの逸物(もの)を咥えながら、お尻を突き出すわたし。広げたおまんこに衰えのない硬い逸物(もの)を挿れる赤毛の熊さん。

 調教師さんの逸物(もの)を咥えて亀頭と雁首を舐め回していると、口の中までおまんこになった気分になります。

 唇と頬の内側と舌は肉壁。咽喉の奥は子宮口。口いっぱいに頬張れば、おまんこにも負けない締めつけになります。これがお気に召したご様子の調教師さんは、わたしのおっぱいも弄んでいます。

 わたしの口に放った精子を塗り込み、ぬるぬるになったおっぱいを揉みしだいては、勃起乳首を指で転がします。上半身の快感に子宮は疼きを上げたまま。そこに太い逸物(もの)をずんずん突き上げる熊さん。

 後背位は一番奥まで届きます。出し入れの激しい熊さんは、わたしのお尻のお肉と自分のお肉のぶつかる音を立てながら、夢中になって腰を振り、今日八度目の精子を放ちました。

 もうわたしのおまんこの中に精子は入り切れません。逸物(もの)を抜いたら、精子はどぼどぼと零れ落ちます。だから床は精子塗れのお酒塗れ。

 お酒塗れなのは、おまんこから零れる精子を洗い流しているから。調教師さんも熊さんも、一度出しては木器の麦酒をわたしにザパァー。二度目を出しては麦酒をザパァー。

 酒樽の麦酒も底を突いたので、今は酒瓶の葡萄酒を頭からどぼどぼされます。葡萄の収穫祭みたいに。

 わたしと熊さんはケラケラ笑い、調教師さんは口の端を上げるだけの微笑み。無言の微笑です。

「結婚前に楽しめたか?」

 もう精子も空になったのか、勃起の治まった熊さんは、赤毛の顎髭に触りながら尋ねます。

「はい。楽しめました」

「俺もだ。ティファニーも楽しめたが、お嬢ちゃんはもっと楽しめた。もう裏街に近寄るンじゃねぇーぞ」

 その機会はなさそうです。来月には婚礼祝いに、結婚後は出産に育児。家と家との繋がりも出来ます。

 どんな遊び人も子供を作ったなら父と母。そして子供にとって父と母──両親とは大人に他なりません。もう子供染みた真似はできないのです。

「俺はまだ治まらねぇー。咥えろ、エミレッタ」

 葡萄酒を手にする調教師さんの逸物(もの)は、まだ勃起中……とても美味しそうに反り返っています。わたしは精子と酒浸りの床に膝を突いて、調教師さんの玉袋を手のひらの上に乗せます。

 まだ重たい……。

 熊さんは八度ほど出しました。調教師さんは? 途中からおしゃぶりに夢中でしたから、回数はわからず。

「いただきますね」

 口に睾丸を一つ含みます。ころころ舌で転がし刺激して、精子が出やすいように導きます。もう一つも。そのまま裏筋に舌を這わせます。下から上へと順番に。ねっとりと肉棒の風味を味わうように。

 唾液をたっぷり乗せた舌で雁首を舐め回したら、唇を突き出して、亀頭に口吻。ちゅ、ちゅ、ちゅ、と音を立てて。そして、しっかり唇を結び、亀頭に押しつけます。おまんこにずぶずぶと挿入するようにです。

 亀頭を口に含み、雁首のくびれに唇を繋ぎ止めたら、舌先を使い、鈴口をれろれろ。同時に亀頭にも吸いついて、竿の根元まで飲み込み、唾液を溜めたら顔を上下に。手を動かすことも忘れずに。

「やっぱ上手いな、お嬢ちゃん。口淫はどこで習った?」

「んんぅ……ンちゅ。ぷはぁ、習ってはいません。れちゅ……ンっ、されたら悦ぶことをぉ……ンっ、覚えただけ、です……んちゅ」

 調教師さんの逸物(もの)を美味しそうにしゃぶってるところ、ベッドに座った熊さんに見られています。

 咥えてる姿を観察されるのは恥ずかしい。舌を出して。ねちょねちょ音まで出して。

 でも興奮する。本人じゃない他人の逸物(もの)を舐めてるの、じっとり隣で見られてるの。

「はうぅ……んっちゅ、ちゅう。んれ、ンはぁ……葡萄と精子の味ぃ……んちゅう、お肉の味もぉ……ンっ」

「お嬢ちゃん、そんなにおしゃぶり好きか。また勃ってるぞ、節操のない乳首が」

「ンあっ、ちゅぱ。んちゅうぅ……ンはぁ……こんな大きいの舐めてたらぁ……誰だって、んちゅ。勃っちゃいます」

「ジョンって奴ぁ幸せ者(モン)だなぁ。こんなおしゃぶり上手な嫁さんもらうんだからなぁ」

「……んちゅ」

 あれ?

 わたしジョンの名前、口に出したっけ? 知られたら拙いと思ったから、言ってないはずなのに……。

『ティファニーも楽しめたが、お嬢ちゃんはもっと楽しめた』

 あれ?

 ティファニーの名前も口に出してないよね? ん、違う。ティファニーも楽しめた……ってなに?

 熊さんと?

 調教師さんとも?

「……ぷはぁ。わ、わたし……ティファニーよりも上手ですか?」

 そう尋いてから、また調教師さんの逸物(もの)を咥えました。

 亀頭は膨張しています。握ってる竿も、とっても熱い。鈴口から垂れてる我慢汁の味は濃ゆいし、玉袋は迫り上がってます。射精の兆候です。

 わたしは咥えた亀頭にちゅううぅ……と吸いつきながら、片手で竿を扱き、もう片手は調教師さんの腰に回しました。こうすると、おっぱいも押しつけられるからです。

 今日一晩で一生分揉まれて、わたしのおっぱいは柔らかになりました。その分、乳首はとってもこりこり。調教師さんの筋肉質な太ももに擦れて、わたしも気持ち良くなります。

「はぁ……」と小さく一息吐く調教師さん。そして「出るっ」と。その可愛い言い方に子宮も疼いてしまい、わたしのお口はおまんこみたいに締めつけて、お腹いっぱいの精子を催促します。

 ぴゅるっと一吹きしてから、調教師さんの精子はどっぷり吐き出されました。それを全部お口に受け止めるわたしは、頬袋を膨らませた栗鼠(リス)のよう。お口いっぱいに溜めた精子を「あーん」して見てもらうと、熊さんは大笑い。調教師さんは呆れています。

 このまま飲み干すのもいいのですが、舌を回してしっかり精子の味を堪能したあとは、持ち上げたおっぱいに谷間を作ってとろとろと吐き出します。おまんこから零れ出る蜜のように。

 精子塗れになったおっぱいを、全身にも塗り塗りして一人遊び。膣(なか)の精子にぽっこり膨らんだ下腹部にも、突き出したお尻の間にも、また花開いているおまんこにも。

 そんな淫らな裸踊りを調教師さんと熊さんに披露します。お祝いの葡萄酒を頭から掛けてもらったら、名残惜しくも……お終いです。

「もう出ねぇーな」

 立ち上がって調教師さんは言いました。口からはわたしの愛蜜の匂い。

「わたしは革細工屋のエミレッタで間違いありませんが、どうしてわたしのことを知っているのですか?」

 それから、確信的な問い掛けをします。

「ティファニーから尋いたのですか?」

 調教師さんは熊さんに横目を向けます。熊さんは蓄えたお髭を弄っていました。

「おいおいブラウーロ。お嬢ちゃんには楽しませてもらったんだ。本当のこと話してもいいだろう?」

 大麻の煙は薄れていました。代わりに部屋は麦酒と葡萄酒の酒気を漂わせ、三本とも短くなった蝋燭は朝陽とともに、お楽しみの終わりを報せています。

「……先日、表通りの女を襲ったと言ったろう? その女はティファニーだ。一晩中犯したあと、ティファニーは言った。友人のエミレッタも犯して欲しいってな。妙な女だったよ」

「それに大金も積み上げたしな」

「……わかります。ティファニーは、わたしの持ち物と同じものを持ったり、自分に遭ったことをわたしにも遭わせようとしますから。でも、それだけです。どの街にも変わり者はいます」

「でもなぁ、結婚式をぶち壊しにされちゃ堪らねぇーだろう? お嬢ちゃんよ」

「……結婚式を?」

「お嬢ちゃん、表街の男は狭量だ。裏稼業の者に犯された街の小娘を嫁にすると思うか?」

「……つまり、ティファニーはわたしたちのことを言いふらそうと? だったら、わたしもティファニーのことを言いふらします。わたしたちは子供の頃からそうやって喧嘩をしてきました」

「もう子供じゃねぇー。嫁入り前の女だ」

「じゃあ……」

 じゃあ、どうしよう?

 言いふらしっこしてもわたしの負け。子供の頃から言いふらしっこには誰も耳を傾けなかったけれど、大人になった今は、裏稼業の者に犯されたなんて噂話が立った時点で婚約は解消。わたしはジョンと結婚できな……っ。

 ああ、そっか。

 ティファニーは、わたしとジョンを結婚させたくないんだ。だから大金まで払って……。

 ティファニーは本気だ。子供の頃からそう。お人形を買ってもらったら、自分も買ってもらう。演劇場に連れて行ってもらったら、自分も連れて行ってもらう。

 街道で転んだから、わたしも転ばせる。階段から落ちたら、わたしも蹴落とす。馬車に轢かれたのなら──きっとわたしの背中も押すんだろうね。

「……殺して」

 父のお金の隠し場所なら知ってる。裏稼業の者(ひと)に法はない。人を殺しても罪にはなりません。

「ティファニーを殺して下さい」

  ◇◇◇

 街の結婚式は貴族のように盛大には行われません。鳴り響くのは婚礼の鐘の音(ね)。舞い散るのは薔薇の代わりに白詰草(しろつめぐさ)の花飾り。それでも──それだけです。

 わたしは街商人の一人娘なので、商業組合の商館で慎ましい晩餐会を開いてもらえるだけ。街中大騒ぎのお祭り──婚約祭というわけにはいかないのです。

「おめでとう、エミレッタ」

 わたしよりも立派な婚礼服を着て、ティファニーは笑います。その笑顔の裏になにを隠しているのかはお見通し。わたしの人生の邪魔はさせるつもりはありません。わたし一人でも、ティファニーを殺します。

 調教師さんと熊さんはわたしから三枚の金貨を受け取ったあと、街から姿を消しました。情報屋さん曰く──「裏街稼業は領境(りょうざかい)から出られない。十字路の街にでもいるだろう」とのこと。

 残念です。あれから……裏稼業のことを知れば知るほど、無駄に、そして無暗に怖がっていたことを思い知りました。

 表街と裏街は表裏一体。商業組合は、その入り口。革細工職人の父でさえ、裏稼業の者と繋がりはあるのです。それは父の跡継ぎになるジョンにも言えることでした。わたしはとってもお馬鹿さん。

 ──パリンッ!

 グラスの割れる音は婚礼の鐘よりも祝福に満ちていました。一番お馬鹿さんなティファニーの顔は真っ青。唇は紫色です。

 貴族の伝統「兄弟殺し」 その方法は毒殺です。そして、その毒を作っているのは裏稼業の者。わたしは疑われません。自分の結婚式を台無しにする花嫁なんていませんから。

 倒れた幼友達を心配そうに見下ろします。でも、心の中では、こうお別れを告げているのです。

 さよならティファニー。わたしも大人になれました。

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